子どもにふさわしい音楽?
ジャズに親しんでいて思うことについて書いてみたくなりました。
「ジャズは難しい」とよく言われます。以前、小さな子どもたちが参加している集まりで、ジャズアレンジした童謡を楽しもうと企てたとき、小さな子どものお母さんから「ジャズは子どもに早すぎる」というようなことを言われたことがあります。ジャズといっても、CのところをCmaj7にしたり、少しスウィングを入れたり、間奏程度のアドリブを入れたりした程度のことです。このときほど、音楽観の隔たりを感じたことはないほど、がっかりしたのを覚えています。
「子どもにふさわしい音楽」は、なるべく単純な、できればCとFとGだけで進行するコード、シンコペーションのない縦割りの2ビート、楽譜どおり、あるいはテレビで鳴っているのとできるだけ同じ構成ということになるのでしょうか。この取り合わせから離れれると「難しい」と感じる感覚って、いったいどこから来ているのでしょうか。
アメリカで、教えてもいないジャズの曲をピアノで演奏する4歳くらいの少年に会ったことがあります。音感や技術は素晴らしいと思いましたが、ジャズだからスゴイと思うのは彼が育った文化的背景を知らないというだけのことだと思いました。子どもは生まれ育った文化に馴染んで自分の音楽の世界を能動的に再構成するのでしょう。「子どもの発達段階」のような「科学的な」知識と、子どもを取り囲む音楽がどうあるべきか、ということを安易に関連付けて定式化すると、子どもの音楽環境は貧しくなるだけだと思います。 (つづく)