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Don Menzaの話

高校生の時、1年だけビッグバンドに在籍したことがあります。以前にも書きましたが、アメリカにいたときのことです。 幸運にもジャズに目がない先生がリーダーで、一度ものすごいレッスンをコーディネイトしてくれたことがあります Don Menzaというテナーサックスのプレイヤーが、私たちのバンドの指導をしてくれたのです。 もちろん、私はDon Menzaが何者か知りませんでした。前もってこういう人だよと先生が教えてくれればいいのに、おっかない顔をしたやくざっぽいおじさんが目の前に現れて、「誰だこのおっさん」状態でした。 その「おっさん」が指導してくれたことで覚えているのは、もっと口の周りの筋肉を緩めて吹け、そのためにもっとペラペラのリードを使え、というようなことでした。 「誰だこのおっさん」状態の私は、不遜なことに、「そんなこと、自分でいい音だと思った音を作ればいいじゃないか」(当時、まだ完全な東京弁をしゃべっていました)と思いました。 演奏の自由度を高める奏法について教えてくれていたのだということが分かったのは、ずいぶん後のことです。 このレッスンだけだったら、別にDon Menzaの名前も記憶に残らず、「あのおっさん誰だったんだろう」という記憶だけが残ったに違いありません。 しかし、レッスンの後に、おっさんが演奏を聴かせてくれたのです。それも忘れることはない、Channel One Suiteという曲です。度肝を抜かれました。この曲です。 https://www.youtube.com/watch?v=SB3mI6lMpuw 曲そのものの迫力も印象的だったのですが、Don Menzaのソロの格好よかったことといったら。30年以上経ってもなお、その時の感動を誰かに伝えたいと思うほどですから。 それ以来、Don Menzaは私の中ではヒーローです。 ただ、残念ながらサックスの演奏自体は、私がめざすところにはならなかったし、CDなどでいろいろなDon Menzaの演奏を漁りましたが、ピンとくるものはありませんでした。 あの時の感動は、やはりライブだったということが大きかったのかもしれません。 付言すると、あの時聴いた演奏は、もしかするとBuddy Richオーケストラのものだったかもしれません。もちろんBuddy Richが誰だか、そのときは知らなかったのですが、Channel One Suiteを聴いたということは、Buddy Richの演奏を聴いたということなのだろうと、今になって思うのです。 なんだかすごいや。知らないうちに、歴史的な音楽シーンを体験していたわけですから。ミネソタ州のアレクサンドリアという小さな町のホールでの話です。

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