リードの話
中学のときにクラリネットを吹くようになってからというもの、リードの悩みは尽きない。ずいぶん最近まで、厚めのリードが好きだった。薄めのリードは音まで薄っぺらく感じて嫌いだった。 Vandorenのスタンダードなリードの3、あるいは3.5をよく使っていた。3.5になると、紙やすりで削らないと、抵抗が強すぎて頭に血が上った。 もちろん、リードはマウスピースとの相性も重要だ。私はもらった楽器の付属品のマウスピース以外に興味がなかったので、実に一般的な初心者用のマウスピースしか使ったことがなかった。3とか3.5の抵抗の強いリードを使っていたのは、それが理由だったと思う。 去年、はじめてマウスピースを選んだ。 きっかけはマウスピースを押さえるリガチャ―という部品が壊れたことだった。ヤマハのお店に行って、いくつかのリガチャ―を試奏させてもらった。そうしたら、リガチャ―なんてどれも同じ、とバカにしていた自分がバカだったと思うほど、それぞれに個性があった。値段の高いリガチャ―はやはり吹きやすかった。安いリガチャ―では音がでなかった。 リガチャ―でこんなに違うのなら、マウスピースならなおさらだ、と思った。そこで、予算を15000円迄と定めて、いいマウスピース探しをした。これがけっこう楽しかった。 けっきょく行きついたのは、日本製の新しいメーカーのマウスピース。GOTTSUのSepia Toneというものだった。もうひとつMeyerというメーカーも迷ったが、最後の試奏で、こちらに決めた。 マウスピースを代えたら、リード選びも楽しくなった。薄めのリードも薄っぺらい音がしないのだ。薄いリードはペラペラの音で、厚いリードは重厚な音、という単純な図式ではなくて、音質、音の伸び、音の操作性、出しやすさ、抵抗感といった要素のバランスをちゃんと考えることができるようになった。 それで今試しているのは、Vandorenのさまざまな種類のリード。硬さは2.5に定めて、あれこれ試すのも楽しい。 ジャズ用のJAVAがいいな、と思って使い込んだが、V12を試してみたら、これもいい。 どの音がいいかを選ぶということは、つまり、私はどういう音を出したいのか問うということなのだ。 この問いは、私はサックスで何をしたいのか、という問いにもつながる。 はっきりと分かってきた私のめざす方向性は、人工的、電気的な音とは正反対の方向だということ。また、私の息の音、身体の動きの音がダイレクトに伝わる、という方向である。 マウスピースから先のほんの10センチ足らずの道具選びの話である。