音楽の能力ってなんだろう?
音楽が、聴く側と演奏する側に分かれる時代から、音楽シーンにすべての人が参加する時代へと移行しつつある中で、問題になる2つのことについて考えをメモしておきたいと思います。 1つは音楽の能力と遺伝との関係、もう一つが著作権の話(こちらは追々)です。
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音楽の能力のほとんどは、遺伝によって決定しているという研究結果が次々と出てきているようです。日本でもいくつかの研究があって、音楽の能力が遺伝に依存している割合は、他の人間の能力よりも比較的高いという説明がなされています。
この研究結果の概要を知ったとき、私は音楽の能力をどのように測定しているのだろう?と疑問に思いました。
音楽の能力って、演奏する能力だけでなく、楽しむ能力、聴く能力も大きなウェイトを占めているように思います。私の経験的実感からいうと、少なくとも楽しむ能力はすべての人に備わっているのではないかと感じています。
仕事の関係でいろいろなタイプの人の音楽行動を観察する機会があります。それを思い返してみると、例えば音楽プログラムにかじりつきで参加して、セッションをいつまでも楽しめるような幼児と出会ったことがあります。この子ほど、音楽と遺伝との密接な関係を想起した人に出会ったことはありません。 とはいえ、音楽の楽しみ方は人それぞれで、いかなる意味でも音楽を楽しめないという人に、私はまだ会ったこともありません。乳児であっても、鈴の音に耳を傾けることのない子を見つけるのは難しいし、ピアノの音に合わせて太鼓を叩くのが嫌いな4歳児を見つけるのも難しいような気がします。言語的コミュニケーションが難しい重度の障害のある人が、楽器の音に反応して表情が緩む姿もたくさん目撃してきました。この子は音楽が嫌いなのかな?と疑った子もいましたが、聴覚過敏が原因で忌避行動をとっていただけだったこともありました。
(つづく)