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月の砂漠

Music Sampleに「月の砂漠」を加えました。今回はサンプルではなく、一曲丸まるアップロードしました。ベターな録音状態や演奏ができたら差し替えるつもりです。 「月の砂漠」は私の大好きな曲なので、何度でも何度でも演奏したい曲です。

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子どもの頃に大切にしていた物のひとつに、木箱のオルゴールがありました。ふたを開けると小さな鏡があって、「月の砂漠」が鳴るオルゴールでした。ベルベットの赤い内装で、きれいな貝殻とか小石などの小さな宝物を詰めていました。 オルゴールの音色のせいでもあったかもしれませんが、この木箱を開けると、私の目の前に砂漠の広大な風景が広がり、月夜に照らされたラクダに乗った商人が地平線を歩いて行くのでした。渡り廊下に面した東向きの部屋で、押入れを改造した私のベッドからボーっと眺める、擦りガラスに映る仙台駅方面の街のネオンと共に、私の記憶に強く残っています。

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後から知ったのですが、この曲は、千葉県の外房の砂浜がモチーフとなった歌詞に付けられたものなのだそうです。本物の砂漠を見たことのない大正期のアーティストたちが、空想をふくらませてロマンチックな作品に仕上げたものなんですね。 「月の砂漠」の作曲家は、佐々木すぐるさんという方で、兵庫県高砂市の生まれなのだそうです。30歳の時に作曲に専念するようになった翌年に月の砂漠を作曲したのだそうです。「月の砂漠」以外にこの人の作曲した曲をyou tubeで探し回って聴きましたが、あんまり素敵な曲は他に見つかりませんでした。「月の砂漠」は、佐々木さんに天から降りてきた曲だったのではないでしょうか。

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ジャズとしては、松田昌さん(ピアニカ)と佐山雅弘さん(ピアノ)のデュオが一番好きです。 https://www.youtube.com/watch?v=VDrnPcH8YEw トランぺッターのリー・モーガンが、この曲を「Dsert Moonlight」として演奏していますが、作曲者は自分自身だと主張しているそうなので、気分が悪いですね。しかも、曲想も「月の砂漠」のよさが十分に出ていないような気がします。日本人がジャズとしてこの曲を演奏するときも、リー・モーガンをなぞっている場合が多いようです。なんか違うなあ。原曲のイメージを共有している日本人は、こういうふうに演奏しないんじゃないかなあ、と考えてしまいます。例えば、 https://www.youtube.com/watch?v=7SppeweT0j4

これは「月の砂漠」ではないと思えば、それまでのことなんですけどね。

西洋人による「月の砂漠」のジャズ的解釈でも、「音のない世界」を音で表現しているような原曲のよさを残しているものとしては、これなんかいいなあと思います。 https://www.youtube.com/watch?v=EqdP1mCvRtE

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それからもうひとつ、この曲に関するエピソードで興味深いことがあります。私が子どもの頃に観た映画でいちばん怖くて印象深かったものに、「八甲田山」という映画がありました。冬の八甲田で日露戦争の軍事演習をしていた軍隊が遭難して、たくさんの人が亡くなったという実話をモチーフにした映画で、軍人たちが雪に埋もれて死んでいく様子が残酷に活写されていました。新田次郎の小説「八甲田山・死の彷徨」が元ネタで、これも読みました。恐怖に憑りつかれた小学生には、映画「八甲田山」のテーマ音楽も恐ろしい響きに聴こえました。その曲が、「月の砂漠」にインスピレーションを得て創作されたと、作曲家の芥川也寸志氏が語っていたのだそうです。そういえば分かる気がします。 https://www.youtube.com/watch?v=5_g4PaIDVvw

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